⚪️マネジャーの実像 ヘンリー ミンツバーグ
【マネジャーの定義づけ】
組織の全体、もしくは組織内の明確に区分できる一部分(≒部署)に責任を持つ人物のこと。
ほかの人たちの最高のパフォーマンスを引き出すこと。
もっとよく学び、もっとよく決断をくだし、もっとよく行動できるようにすること。
⚫︎マネジメントを成功させるには、サイエンス以上にアートの要素が必要、それにも増してクラフトの要素が不可欠。
⚫︎問題はリーダーシップの過剰とマネジメントの不足。
⚫︎リーダーシップは実績を重ねて獲得していくもの。誰かが授与できるものではない。
ーいい商品なんていらない。そんなことより、火曜日にぜったいに間に合わせてくれ。ー
⚫︎日々のマネジメントの「現実」と、計画・組織・指揮・調整・統制という「神話」の板ばさみ。
⚫︎マネジャーは雑多な仕事を細切れに行う。マネジメントとは管理すること、実行すること、考えること、リーダーシップを振るうこと、意思決定をくだすこと、もろもろ混ざり合った活動。
⚫︎「マネジャー本来の仕事」と思っている活動のかなりの部分は、特定の業務機能に分類できる。
⚫︎マネジャーの歴史と定義
○1916年 アンリ・ファヨール
マネジメントはコントロール(=統制)
計画・組織・人事・指揮・調整・報告・予算
○1960年 人間の次元のマネジメントが重んじられる。コントロールの役割が復活。
○コントロールの役割は重要、しかしコントロールばかりを考えないことも重要。マネジャーは特定の一つの役割だけに意識を奪われてはならない。
⚪️マネジメントの最も重要な目的
「組織・部署が役割を果たせるようにすること」
⚪️三つの次元
【情報の次元】 (現場業務から最も遠い)
⚫︎組織が目的を達するための直接的な行動から二歩距離をおくことを意味する。
⚫︎マネジャーが情報を処理し、その情報を使ってほかの人間を動かし、必要な行動を取らせる。
ーマネジャーの役割ー
①コミュニケーションを取ること。
○マネジャーが膨大な時間を費やす活動であり、仕事を実行するための手段でもある。
⚫︎モニタリング活動 情報を集める。
⚫︎組織の情報中枢の役割
マネジャーの部下は相対的にスペシャリスト。マネジャーは相対的にゼネラリスト。組織の全体業務についてはたいてい誰より情報をもっている。 情報拡散活動を通じて組織内に情報を伝達し、スポークスパーソン活動を通じて組織外に情報を発信している。
②コントロールすること
=情報を活用して組織のメンバーに行動を取らせること。
【人間の次元】(中間)
【行動の次元】(近い)
⚫︎情報の次元と人間の次元
○情報の次元では、情報を用いて、ある目標に向けて人々を本人の意向に関係なく動かす。
○人間の次元では、人々の背中を押し、本人が自発的に望んで行動するよう促す。
⚫︎マネジャーの役割:組織内の人々を導くこと。組織外の人々と関わること。
⚫︎マネジャーが担う実行の役割には2つのタイプ
①主体的にプロジェクトをマネジメントする
②発生したトラブルに対処する
⚫︎対外的な取引に関しておこなうマネジャーがおこなう活動
①特定のテーマについて、同盟関係を築くこと
②同盟関係やその他のネットワークを活用して、交渉を行うこと。
⚫︎女王蜂は特殊な化学物質を放出することにより、巣のメンバーを一つに束ねて活動させる。人間の組織の場合、女王蜂の化学物質に相当するのは組織文化。組織の文化を築いたり、いったん確立された文化を変えるのは容易ではない。
⚫︎数値測定のミステリー
○マネジメントという活動それ自体の成果を数値で測定した人物はいない。
○数値測定に頼れないとき、どのようにマネジメントをおこなえばいいのか。
⚫︎ハードデータの守備範囲には限りがある。ライバル企業がドジを踏んだ、とすればそれを直接裏づける数字データは存在しない。自社の経営陣が有能だったから、かも数値データでは判断できない。
○レナード・セイルズ 主張
⚫︎マネジャーは組織の行動の中心でなければならない。
マネジメントの本質:「終わりなき交渉や取引」に携わったり、「自分自身と部下の行動の方向を修正」すること。
重要な決定を下す、計画を立てる、部下のモチベーションを高めることが主ではない。
○チェスター・バーナード
「経営者の仕事は組織を作ることではない。組織を稼働し続けさせるための仕事が、経営者の仕事。」
○マクロリーダーとマイクロマネジャー ⚫︎アンドリュー・グローブ(インテル)
一人の部下に対して週に二日接すれば、おそらく口を挟みすぎ。
しかし週に1時間では十分なモニタリングができない
⚪️マネジメントのジレンマ
ムカデは、とても幸せに暮らしていました。ところが、ヒキガエルが面白半分にこう言いました。おまえ、歩くときはどっちの足を先に出すんだ?このひとことが頭から離れなくなってムカデは、泥の中でこんがらがってしまいました。どうやって歩けばいいか、わからなくなってしまったのです。
E.クラスター夫人の詩より
【思考のジレンマ】
⚫︎上っ面症候群 「いい商品より期限を守ってくれ」
⚫︎「計画の落とし穴」
○慌ただしいマネジャー業務の中で、マネジャーとして指示を発し、意思決定を監督する役割を実践することの難しさ
○上手に対処できるマネジャー:関与型のマネジメントスタイルを実践しらものごとの本質を見抜ける人物
⚫︎スラブ 管理する側とされる側の断絶
・ミドルマネジメント層の削減?
【コントロールのパラドックス】
⚫︎自分より地位の高いマネジャーが秩序を押しつけてくるとき、マネジャーはどうやって「統制された無秩序」を維持すればいいのか。
⚫︎目標設定の弊害
○シニアマネジャーにしてみれば、目標設定は都合のいいマネジメント手法。
※えてして地に足のついていない願望にすぎない。
【人間の次元のジレンマ】
⚫︎マネジメントに成功するためには、かなりの自信の持ち主でなければならない。
※マネジメントの仕事は、気弱な人間や自信のない人間には務まらない。問題から逃げたり、人に押しつけたり、保身ばかり考えていたりする人間には組織のメンバー全員が迷惑をこうむる。
⚫︎あまりに自信満々な人物にも問題がある。
【行動の次元のジレンマ】
⚫︎行動の曖昧さ
微妙な差異が大きな意味をもつ環境で、どのようにして決断力を発揮すればいいか。
※自身で断言するのは確実なこと、あとは皆を巻き込んで一緒にやる?
「自信のわな」
自信があれば果敢に決断をくだせるが、曖昧な状況で断定的に決断をくだしすぎるのは傲慢。
ex)大企業で企業買収が裏目に出るケースがよくあるのは結果をはっきり予測できないのに大きな決断をくだしてしまうのが原因。
→どうすればいい?
そのための情報収集。それも迅速に。
○「ジャパニーズ・マネジメント(リチャード・パスカルとアンソニー・エイソスの著書)」
⚫︎正しい対処法がわかっているという︎自信のもと、特定の一つの選択肢を正解と決めつけるとうまくいかない。いくつもの選択肢の「お手玉」「もみほぐし」て、原点に立ち返ると自律的に修正できる。ただし、問題を「仮死状態」に保っておく必要がある。
⚪️マネジャーに要求される資質(トロント大学院ロットマン経営大学院)
○「恐れることなく決断をくだせる能力」の大切さがうたわれる。
(反論:ミンツバーグ)それは本当に重要な資質か。
重要なのは「恐れることなく【正しく】決断をくだせる能力」。
【正しく】は普遍的でないものもある。つねに正しいは不可能。人によっても異なる。致命的な間違いを避け、正しい比率を高めていく。
⚫︎「上っ面症候群」が手に負えないまで重症化したケース
事業の多角化や企業買収、リストラやダウンサイジングを打ち出したがり、車内の複雑な問題を解決しようとしない
⚫︎マネジャーにとって重要なのは「ワールドリー」、広い視野をもつこと。
○「グローバル化」にはある種の同質化が伴う。誰もが現代的で当世風の人間になり、いま出現しつつある「地球社会」の一員になる。
○振り返りを重んじる人物は、自分自身の頭で考える。
⚫︎ワールドリーの定義
○人生の経験が豊富であること
○世の中の事情に通じていること。
○実務処理能力が高いこと(ポケット・オックスフォード英語辞典)
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